池ノ谷探訪
               池ノ谷(中央が剱尾根)5月の様子

         池ノ谷は北アルプス剱岳、早月尾根の左側にあり、富山平野から
         夏でも残雪を見る深い谷である。 
         
         残雪期は剱岳北方稜線上のエスケープルートや三の窓や剱岳へのルートとなる。
         ただ残雪期でも早い時期を除き、小窓尾根を1600Mまで登り、これを乗り越えなければならない。
         急登で危険な上り下りがある。大変苦しい登りが登山者を容易に近づけなくしている。
         しかし、その事を別にすると最速で北アルプス剱岳の最深部に入る事が出来るのである。

         例年8月末までは左又から三の窓への通過が可能であるが、
         年により雪渓の消え方が違うので困難を伴う事もある。

         この山域には殆ど毎年来ているが、ここに掲載するのはその一部で比較的良い条件
         ものを物を掲載している。      

平成24年9月26日(木)27日(金)
平成18年9月2日(土)3日(日)
平成14年5月24日(土)

























平成24年9月26日(木)27日(金

   平成24年9月26日(木)27日(金)
                 
紅葉の偵察と右股の氷河見学 
  
 同行者2名  A氏、N氏
 今年の夏は例年になく暑く長かった。ようやく夜の冷え込みがあり寝苦しさから解放された。
 台風が週末に来襲するというのでその前に行く事にした。連日夏の様な気温で快晴だった。
 会の仲間3人で写真山行、氷河の池ノ谷探訪である。

 馬場島から白萩川に通ずる道路は、工事中で分岐から少し入った所でフェンスで通行できなかった。
 仕方なく歩く。取水口からは高巻きをせず徒渉して雷岩まで。
 例年この時期は水量が少なく飛び石伝いに行けるが、場合によっては靴を脱いで渡ることも。

7:33
馬場島スタート

9:30
雷岩

10:52
小窓尾根に取付きしばらく登ると下山者とすれ違う。相手はKガイドと砂防博物館の学芸員達4人だった。氷河の調査で入山中だったのだ。

氷河の中央に観測点の柱を埋め込み
両壁に設置したセンサーで観測しているとの事だった。

ルートの情報をもらい挨拶を交わし別れた。
11:35 
1600M小窓尾根乗り越し

写真のように未だ紅葉には早い。谷を見る。途中の雪渓がズタズタに切れている。(木の陰で見えない部分)日差しが強くて暑い。

通常のテント泊にカメラに三脚などの荷物を担いでいるのでここの登りは大変苦しい物がある。
ハア〜ハアと肩で息をする。
12:19
富大岩屋に着く。
草を敷き詰めたテントサイトが上下に点在している。川の近くで気持ちの良い場所だ。しばらく時間を取って休憩しながらカメラを向ける。

大きな岩がごろごろの谷で小さな滝が連続してる。冷風が涼しくて居心地が良かった。

ここからの剱尾根は迫力満点だ。
アプローチは困難が多い。雪渓に乗ったり、大岩を乗り越え川を飛び越し、右岸〜左岸をパズルのように行く。落石や砂礫でさらに体力と集中力をそがれる。

それでも時々ポイントを見つけてはカメラを出し、ゆっくり上る。

二股近くではガスに巻かれて方向を失うが、数回の経験値があるので過去のイメージでテントサイトへ到着。
5:30テントサイト
剱尾根の真横にあるテントサイト。
ここは良いサイトだ。落石の心配もなく、すぐ上で水が取れる。

ところが、今回は私のミスでテントポールを忘れてきたので、カメラの三脚を両サイドに立て、テントをつり下げて何とか空間を確保したのでした。

幸い快晴で夜露もなくラッキーだった。
日没が迫ると、小窓の王に夕日が当たり赤く染まり始めた。

静かな夜の幕が降りる。

満天の星空が待っていた。凄い!


私は一人、外にマットを敷き夜空を見ながら寝た。満天の星空に、人工衛星や飛行機の姿を見ていた。谷間から富山湾の夜景がきれいに眺められた。
7:00
翌日、アイゼンを履いて左又を三の窓に向け遡行を開始。クレパスの様に割れた雪渓を渡り岩屑の堆積する大岩を縫って進む。浮き石を蹴落としながら岩を越えてゆく。

私の不注意で、落とした岩が後続のA氏に当り、その勢いで飛ばされて2M位落下した。

幸い両手に持ったストックがガードした格好でストックはバラバラに破損したが軽い打ち身ですんだのは幸いであった。

反射的にガードしたので直撃は避けれたのでした。一瞬の事だった。

その後は充分間隔を空け注意して行く。

8:45
三の窓から朝日が差し込んでくる
三脚を立て瞬間を撮ろうと構える。
9:20
中間の狭くなった所で、とうとうブリッジの崩落が有り進めなくなった。三の窓がそこに見えている。

行けなくは無いのだが、帰りの保証もなく冒険を止め、写真を撮り終えて下る。

前回もここまでだったように記憶してる。写真山行なのであえて冒険は控えた。
同行の仲間。狭い谷では息を抜けないが、ここでは安心だった。カメラを仕舞い下りの準備。
10:33
一旦二股へ下り、右又へ登り返す。
雪渓の中央に氷河観測用の杭が打ち込んであった。これが氷河である?
快晴に恵まれた二股の景色。
爽やかに全景を見せてくれた。

正面が剱尾根。
それを境に右股(氷河)と左股(三の窓へ続く)
時間が来たので下山開始。
剱尾根をバックに今回の相棒を撮る。

  小窓尾根を下り、雷岩に戻ると
  山岳警備隊が行方不明者の捜索に来ていた。顔見知りの隊員もいて情報交換。
  
  私達は彼らが引き上げていった後を追うように出たが、すぐ姿も見えなくなった。
  やはり鍛え方が違うと感じた。




                       











成18年9月2日(土)3日(日)



        平成18年9月2日.3日

        かつては大学や社会人の山岳部が登下山に小窓尾根乗り越しを利用し、ルートも明確で
        あったが最近は訪れる登山者が減少し、やや荒れ始めている。
        (その為、地元の山岳会で山道整備をしているが、ここまでは手がとどかない。)
        特に今年の池ノ谷は、8月には雪渓が切れて通過が難しく迂回する事が多く、例年なら踏まれて
        トレイルのある草付きも自然に戻っていた。
        

6:30上市役場で仲間と待合い
7:30白萩川取水口発

 高巻きルートで雷岩まで向かう。
 
 
 
 
高巻きルート
今年も会の行事で例年の通り草刈奉仕を
したのだけど時期が早すぎたので、
(積雪が多く)殆どのび放題。

朝露でびしょびしょ。
下りはともかく、登りにここの通過は
辛いものがあると思いながらくだる。
8:40
雷岩着
徒渉点には目印にロープが張ってあり
靴をぬかず飛び石で渡る。

川下から2人の登山者がこちらに向かって
いるのを見る。
後から来た2人組みは早いペースで
尾根に出る前に私達に追いついた。

聞くと、埼玉から来たと語った。
  ゴルジュの高巻きをせず3度の徒渉
  で1回のみ靴を脱いだと話してくれた。

行き先は
  小窓尾根の通過でドーム泊
  翌日、早月尾根下山と語った。

道を譲るとすぐに見えなくなった。早い!

10:38
1600M小窓尾根乗り越し着
彼等の姿はもう そこにはなかった。
藪の中にわずかな気配を感じたのみ。

(池ノ谷右又雪渓と剱岳山頂)
11:17
池ノ谷におりる。
尾根から笹林を下ると、草が覆い
夏道が隠れている。トラバース道も
わずかな踏み跡をたどり、顔の高さまで
伸びた草をなぎ倒しながら進む。

例年ならきれいにトレイルが出来ている
斜面も人が入らないと解らなくなる。

念のため石を積んだり木を折って
目印を付けて下る。
下った正面には目印の大岩があった。
ペンキマークも明確に残っている。

その横から写真を撮る。
上部は雪渓が埋めている。

少し上の大岩の影に良いテントサイト
がありここで風を避けて昼にする。
13:40
二股手前でガスが切れて前方が
見え隠れする。
時間をかけて写真を撮る。
(中央が池ノ谷右又谷)
左又の岩棚にテントを張りとりあえず
荷を下ろす。
すぐに右又奥壁の偵察に出かけるが
ガスが覆い、水場も発見できなかった。

15:48
上部二股の手前でガスが一瞬消え
その瞬間を撮る。

その後ガスの中をテントに戻り、水を取るた
めに再び100M程下る。右岸のシュルンドに
潜り込み真っ黒なトンネルの中で氷柱からの
水滴をコップで集め、何とか一晩の水を確保。

 夜間は小雨。
5:30
起床
7:00
アイゼンを付け左又を三の窓に向けて
偵察に出かける。
 

オコジョがテントの上部で行ったり来たり
している。どうやらテントサイトが彼の
通路上にあったらしい。 
すぐに雪の下に通路を見つけ下っていった。
左又で最初のクランクを登ると
大きく切れている。
右岸(左側)を20〜30M位高巻き
再び雪渓に戻る。
その後は未だつながっているので
そのまま行く。
18年池谷雪渓 9:00
R10を過ぎると雪渓の両側が切れ落ち
リッジになっている。

この谷のほぼ中間地点、狭くなっている
地点。

雪渓がおもしろい造形美を作り出している。


池谷三の窓を見る 小窓の王が姿を見せる
さらに上部に行くといよいよゴルジュが
むき出しになってくる。
大岩が谷を埋めその所々に残雪と
大きなブロックが乗っている。

切れた雪渓の間をアイゼンを効かせて
下り、川底をさらに上部を目指す。

上部で残雪が消えると、小さな滝の連続や
砂礫に大岩が乗っている危険地帯。


ちょうど朝日が谷に差し込んで
明るくなったので下方を撮る。

三の窓はすぐそこに見えているが
時間が掛かりそうで、ここいらまでが
限度と思い定める。
10:00
最上部の雪渓を降り谷底でようやく
水を汲みコーヒーを沸かす。
実に美味いコーヒーだった。

今後の水もどうにかゲットし、写真を撮り
納めた頃タイミングを計っていたように
下方からガスが登ってくる。
ガスが急速に谷を覆いあっと言う間に
薄暗く不気味な谷にしてしまった。

下山を開始すると所々で岩の崩落が
谷中に響いてくる。
ガガーン、ガラガラー、ボカーン
声を発する事もはばかられる緊張感が
ある。

12:12
テントサイトに戻る。
テントを畳み昼食のラーメンを
汲んできた水で作る。
美味い!

 下山中の偵察で意外と近くに
 貴重な水場も発見した。大収穫!
 (これまでの苦労が馬鹿みたいだ。)

12:57
雪渓を下り大岩に目印を見つけ
来たルートを戻る。
夏草が繁茂して顔まである。
辛い登りだった。



途中で慰めてくれたピンクの花
13:30
1600M乗り越し


14:17
小窓尾根を下り
ようやく白萩川の川原が見え始めた。
浮き石が多くさらに注意して下る。

※上部2ヵ所で倒木が道を跨いでいる。
  次回はノコギリが必要だ。

    ※ 10月1日撤去した。
14:34
川原に降りる。

 その後、昨日の情報を元にゴルジュを3度の徒渉で車に戻った。
やはり情報通り一度は靴を脱ぎ、後は飛び石伝いで来れた。
さすがに水は冷たかった!。火照っている身体の為 温度差があるのだ。

高巻きをしなかったのは良い判断だった。
(案外この時期は水量は少ないのだ)



                           




















平成14年5月25日(土)

               池ノ谷二股   (剱尾根末端)





平成14年5月25日(土)
同行者  4名
タカノスワリの高巻き迂回ルートの下見と池の谷二俣より、右股上部の
偵察をかねての山行。
行きは、タカノスワリを高巻き、雷岩までのかねてより考えていたルートを
確認し、下山時は、高巻きせずにざぶざぶ膝上まで濡らして戻った。
やはり早い。
 
今年は残雪が思っていた以上に後退していて対岸に渡るのに神経を使う。
もっとも、ここはこれがあるから人が入らないのだが。
8:10雷岩
池ノ谷出会いから雪渓を眺め、渡渉点を探す。
雷岩付近での右岸をへっつり残雪に移る、靴を
濡らさずに小窓尾根取り付きに至る。

ここの通過が一番苦労するところだった。

写真は雷岩付近からから大窓を望む
新緑が鮮やかだった。

                      9:50
                       小窓尾根乗り越し1600M地点
                       展望が開けて開放感に浸る。

                       尾根上に残雪があり移動する余裕がある。
                       剱岳の全容に、手前の新緑と池ノ谷を埋めた
                       白い雪渓とが鮮やかなコントラストを描いている

澄み切った空気と春の芽吹きがさわやかに
感じられる。

向かいの大猫山と猫又、手前が赤谷尾根
10:35
シラネアオイと池ノ谷。
稜線から下る途中で、急斜面に咲く花を見つけた。

人知れずひっそりと谷を見下ろして咲いていた。



10:57
池ノ谷に降りる。びっしりと雪渓が谷を埋めている。
例年よりもデブリが少なく、きれいな谷だった。

緩い傾斜の谷を歩きながら、分岐している小さな谷を
見上げると、今の時期ならば容易に支尾根に登れそ
うな雪渓がそこそこに出てくる。
時間があればちょっと立ち寄って登ってみたくなるよう
な明るい谷だ。

12:20
二俣着
偵察に向かうメンバーを送り出し、剱尾根の先端に
露出した唯一平坦な地面で昼食タイム。
やや風があったが、のんびりと時間を過ごした。


14:50下山開始
偵察から戻った連れが戻るとゆっくりと下った。

18:00馬場島

 初めて池ノ谷を体験する友人を誘っての山行。
時期や同行者が違うだけでも、それぞれに楽しみがある
良い季候に恵まれて、野趣あふれる体験に満足した様子だった。

山里近くにいてさえもまだ未知の尾根や谷が多くある。
人に出会わない所も多く、冒険心はやむところを知らない。
帰路にとったわずかな山ウドが良い土産となった。